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[R-GIROパンフレット] 

「読書に障害をもつ人にも読みやすい電子書籍の普及に一石を投じる」先端総合学術研究科 立岩真也教授



読書のバリアフリー化を見すえ電子書籍の「あるべき姿」を提言する

 視覚障害などによって読書が困難な場合、書籍の利用は著しく制限されます。点字書籍はあるものの、数も種類も一般書籍には遠く及びません。これまでは、視覚障害をもつ当事者とその支援者が自ら書籍をデジタル化し、音声読み上げソフトや点訳ソフトを用いて必要とする書籍を読んでいたのが実情でした。こうした状況の光明となり得るのが、電子書籍です。
電子書籍のデジタルデータを活用し、自動音訳・点訳が可能になれば、健常者と同じように読書することができるようになります。また文字を拡大、反転したり、画像や音声を加えたりとマルチメディア化することで、弱視の人や読字障害の人も読みやすくなるでしょう。近年の電子書籍市場の成長、電子図書館の拡充によって、こうした読書のバリアフリー化を飛躍的に進展させる好機が見えてきました。
 とはいえ技術やツールの発達だけでは、それを求める人に届くことにつながりません。普及させるための規格や制度を整え、流通の仕掛けを構築することが不可欠です。しかし読書のバリアフリー化について実証的・理論的に論じ、電子書籍のあるべき方向性を示す研究は、日本ではこれまでほとんど行われていません。
このプロジェクトでは、電子書籍の動向をグローバルに収集し、電子書籍による読書バリアフリー化を巡る諸問題を国際的に比較・整理して課題を明らかにしようとしています。研究成果を出すのみならず、必要な情報提供や成果報告、政策提言を行い、電子書籍への実装にインパクトを与えること、そして読書障害者にとって本当に使いやすい電子書籍の普及に結びつけることが目標です。電子書籍市場の萌芽的段階である今のタイミングで「あるべき姿」を提言することが、今後の読書バリアフリー化を大きく左右することは間違いありません。

著作権者の利益を考慮しつつ電子化を進める手だてを探究

 プロジェクトに結集したメンバーは、これまでにもさまざまな機会に連携し、問題意識を共有、研究を蓄積してきました。その中で、書籍の電子化を推進するにあたっていくつかの課題を浮き彫りにしています。
 一つは、出版産業が抱える「複製」に関する課題です。2009年に著作権法が改正され、「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」に大学図書館や公立図書館なども電子データによる複製物を提供できるようになり、規制が大幅に緩和されました。今後、著作権者や出版権者の利益を考慮しながら電子データを有効に複製するため、プロジェクトでは法律や政策的な側面から手だてを探究しています。

効率的で広範な電子化のためには大学図書館の連携が不可欠

 また印刷物の電子化に多大なコスト、手間、人員を要することも課題の一つです。既存の印刷物の文字情報をテキストデータ化するには、本を裁断してページごとにコピーし、スキャナーで読み取り、文字画像を文字データに変換する OCRソフトを用いてコンピュータに取り込まなければなりません。加えてソフトの誤認識を校正する必要もあります。大学などの高等教育機関の学生たちが必要とする専門書籍は、もとより出版部数が少なく、電子化を商業的に成立させるのは困難です。こうした書籍の電子化の担い手として、私たちが重視しているのが、大学図書館や公立図書館です。現在は、各々の図書館が必要に応じて独自に電子化に取り組んでおり、普及は遅々として進んでいません。データを共有できるという電子化のメリットを最大限活用できるよう、大学図書館のネットワークを構築するための方策を提言していくことも私たちの役割だと任じています。
 その他、デジタル社会論、障害学、支援技術、情報政策といった多様な観点から複合的に研究し、その成果を提言することで、電子書籍のバリアフリー化に貢献していきます。



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立岩真也教授 Shinya Tateiwa

 1990年 東京大学大学院社会学研究科社会学(A)博士課程単位取得退学。'90 年 日本学術振興会特別研究員(PD)、'93年 千葉大学文学部行動科学科社会学講座助手、'95年 信州大学医療技術短期大学部専任講師、'97年 同助教授、2002年 立命館大学政策科学部助教授、'03年立命館大学大学院先端総合学術研究科助教授、'04年 同教授、現在に至る。日本社会学会(研究活動委員~2003)、障害学会(理事)、福祉社会学会(理事)、日本生命倫理学会(理事)などに所属。