コラム001 / IRIS


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IRISコラム:
『東芝のユニバーサルデザインと電子書籍音声読み上げ』

執筆:松原 洋子
リリース:2011/05/02

東芝では「ユニバーサルデザインの推進」がCSR(企業の社会的責任)のひとつに位置づけられており、社内に「東芝のユニバーサルデザイン」というウェブサイトも設置されている。

東芝技術企画室発行の『東芝レビュー』(注1)では、2003年と2010年にユニバーサルデザイン(以下、UD)を特集している。このうち2010年の「東芝グループにおけるユニバーサルデザインの取組み(PDF)」では、UD・バリアフリー・ICTアクセシビリティに関する政策を簡潔にレビューしながら、東芝グループにおけるUD施策を具体的に解説している。これによると東芝では開発プロセスにUDを組みいれる「UDビルトイン」を推進し、開発過程に障害をもつユーザーの要望などを取り入れるほか、2007年から「UDアドバイザー制度」を設け、障害をもつ従業員の意見を商品開発に反映しているという。

ところで、東芝は2011年4月20日に電子書籍ストア「ブックプレイス」を開設すると同時に、「レグザタブレット AT300」を6月末に発売すると発表した。音声読み上げソフト「東芝スピーチ シンセシス」をダウンロードすれば、レグザタブレットやノートPCダイナブックシリーズで、「ブックプレイス」で購入した約6000タイトルの本を音声で聴けるという。これまでSony Reader、GALAPAGOS、SH-07C、biblioといった国産の電子書籍リーダーには、音声読み上げに対応する機種がなかった(注2)。その点でレグザタブレットの音声読み上げ対応は、画期的といえる。東芝の「ブックプレイス」は凸版印刷・インテル・ビットウェイが組んだ「Book Live!」と連携しており、電子書籍流通のプラットフォームを音声読み上げを組み込んだかたちで、展開している点も注目される(注3)。

また東芝は、高品質音声合成クラウドサービス「ToSpeak Online」を2011年3月30日に開始した。契約者がクラウド上で音声コンテンツを編集し、それをウェブコンテンツの読み上げサービスや、オーディオブックの提供などに利用できるというものである。東芝のニュースリリースによると同社は25年以上にわたり音声合成技術の開発と商品化をすすめてきた。また「IT技術の進歩とライフスタイルの多様化、またユニバーサルデザインの普及により、さまざまな生活シーンにおいて、音声によるメッセージやガイダンスの必要性が高まり、より幅広い分野での音声合成技術の活用が期待され」るという。「東芝スピーチ シンセシス」は、東芝の音声合成技術を電子書籍ビジネスに応用したものと言えよう。

前述の「UDアドバイザー制度」などを通じて、障害をもつ当事者の意見が「ToSpeak Online」「ブックプレイス」の開発過程にどのように活用されたのか、興味がある。また、これらはウェブや本へのアクセシビリティを音声化によって推進するサービスとして期待されると同時に、すでにスクリーンリーダーを活用してウェブを利用している人々にとっての使い勝手も気になるところである。



注1 『東芝レビュー』のPDFは、Adobe Acrobatでアクセシビリティチェックをしたところ、スクリーンリーダーでアクセスできない形式になっている。画像ではなくテキストが埋め込まれており、キーワード検索は可能。セキュリティ上の問題だろうか。UD推進を掲げている企業なのに残念だ。

注2 山口翔「既刊書の電子化と流通を巡る諸課題の検討――雑誌『生存学』を題材に」(2011年3月3日バリアフリー電子書籍研究会、立命館大学衣笠キャンパス)での報告。

注3 「ブックプレイス」の本は、東芝以外のアンドロイド端末やウィンドウズ搭載PCでも、「ブックプレイスリーダー」をダウンロードすることで閲覧できる。その点ではプラットフォームは東芝製品以外にも開かれている。しかし、音声読み上げに関しては東芝のダイナブックシリーズのPCおよびレグザタブレットにサービスが限定されており、いわゆる垂直統合モデルが採用されている。